2024年03月26日
2024年2月27日(水)、帝京大学医真菌研究センターの研究グループが、国内の動物園で飼育されているすべてのコアラを調べ、コアラ病病原菌のクリプトコックスの保菌状況とその仕組みを明らかにしました。
帝京大学大学院医学研究科医真菌学博士後期課程第3学年に在籍する獣医師 大村美紀、帝京大学医真菌研究センター兼担講師 佐藤一朗、博士研究員 田村俊、研究補助員 小森綾、および副センター長?教授 槇村浩一らの研究グループは、コアラ病とも呼ばれるクリプトコックス症※1からコアラを守るため、日本中の動物園で飼育されているコアラのクリプトコックスについて20年以上研究を行ってきました。
今回、日本動物園水族館協会(JAZA)の協力を得て、初の試みとなるコアラのクリプトコックスの一斉調査を行いました。国内の7カ所の動物園で飼育されているコアラ全頭を対象にクリプトコックスの検査を行い、分離されたクリプトコックスについてこれも国内のコアラでは初の試みとなるMLST(Multi locus sequencing typing) 解析※2を行いました。
調査の結果、クリプトコックスの高病原性株は検出されていません。また、クリプトコックスは、コアラから排泄された後に土の中で増殖し、それが空気中に舞い上がって他のコアラが吸い込むことで感染を広げている可能性が示唆されること、クリプトコックスを保菌したコアラが繁殖などのために他園に移動することで持ち込んでしまうことなど、重要な知見を得ました。しかし国内のコアラは厳重に管理されているので、少なくとも20年を超える本研究?調査の中でコアラから感染した人のクリプトコックス症は見つかっていません。
今回の研究結果は、コアラにおけるクリプトコックス症の防疫に役立つとともに、人獣共通感染症の原因菌となる本菌の疫学を示すものとなりました。今後も当センターはコアラのクリプトコックス症の調査を通して、ヒトとコアラの健康に寄与していきます。
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