帝京大学経済学部国際経済学科
講師
伊藤寛了 先生
東京外国語大学在学中にトルコ共和国アンカラ大学に留学、その後同大学大学院在学中に同国ボアズィチ大学アタテュルク研究所に留学。2006年にトルコ日本国大使館専門調査員となる。2019年に帝京大学に着任し、トルコにおける難民政策とシリア難民保護の支援をテーマに研究。
第二次世界大戦後の1951年、「難民の地位に関する条約」が採択。その後改訂が加えられ、現在は「難民条約」に記された定義に合致する人を「難民」と認定。一方、この定義に合致せずともさまざまな理由で移動を余儀なくされ、保護を必要とする「準難民」が増加している。
周囲をイラクやシリアといった紛争国に囲まれているトルコは、世界最多の難民受け入れ国である。シリア人難民の多くはトルコ都市部に散らばり、10年近く一般生活者のように暮らす人も。彼らは就労も認められているため、自分たちはトルコに適応したと考える人が多い。一方でトルコ国民の中には「仕事が奪われる」と懸念をもつ人々もいるため、課題も多い。
難民問題の解決は、上記のような3つがあるがどれも簡単ではない。そこで今、新しい動きとして、個人がもつ能力や可能性にフォーカスし、優秀な人材の帰化を認める、起業を支援する、スポーツやアートで活躍の場を提供するといった企業や大学での取り組みが盛んになっている。
帝京大学は、日本に住む日本国籍を持たない難民が大学で学ぶことをサポートする「難民高等教育プログラム(RHEP)」に参画。シリア難民の学生1人を留学生として受け入れた。人権や政治など多くの問題を内包する難民問題に向き合って解決の糸口を探すことは、SDGsのアクションそのものであり、新しい社会価値の創造につながっていく。