帝京大学理工学部バイオサイエンス学科 准教授
宮本皓司 先生
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程を修了後、東京大学生物生産工学研究センター特任研究員となる。2018年より帝京大学理工学部バイオサイエンス学科講師、2024年より准教授。同大学先端機器分析センターの准教授を兼任。
世界三大穀物である米、小麦、トウモロコシはすべてイネ科。稲は、食料になる植物の研究の中でも単独で巨大な研究ネットワークが形成されるほど、各国共通で重要視されてきた。
産業革命以降、穀物の大量生産が可能になると、病気や害虫の被害も増大。人類の食料問題の解決には、強い稲の開発が必要不可欠になった。宮本先生は、高温、低温、乾燥、害虫といった外的環境に対する耐性、いわば「稲の生存能力」を研究。特に温暖化が進む昨今では、高温耐性の研究に注目が集まる。
近年では、モデルとなる植物の遺伝子情報を利用した研究が進んでおり、世界中でシロイヌナズナといった植物が基礎研究に用いられている。研究者の間で稲へ応用できる遺伝子について情報交換が行われている。
遺伝子の働きが稲の生育や環境適応にどう作用するかがわかることで、効率的な生態解析や品種改良が可能になる。人類の摂取カロリーの大半をカバーする穀物の研究が世界中で同時並行的に進展することで、課題解決の成果につながっている。
SDGsの解決に求められることは、一つのテーマに対して立場の違いや環境の違いを超えてリソースを持ち合い、解決に向けた道筋を示していくこと。稲をはじめとする植物の研究における世界の協力体制には、SDGs解決に向けたヒントが詰まっている。