帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科 教授
佐藤真治 先生
大阪産業大学人間環境学部准教授、教授を経て帝京平成大学の健康メディカル学部教授に。2021年から現職に就任。日本心臓リハビリテーション学会評議員、日本臨床運動療法学会などさまざまな学会で精力的に活動している。
佐藤先生は「運動で身体のホルモン環境が変化することで病気が治るかも」という思いから、運動療法を研究。それまで絶対安静が当たり前だった心臓病患者に運動を取り入れる、心臓リハビリテーションを実施。自律神経の安定や、動脈硬化の改善、再発を抑えることがわかった。
さらに、学生に協力してもらい、高齢の心臓病患者へのスポーツリハビリを行うと、病院で行うよりも患者が元気になることがわかった。孫のような存在の子が話を聞いてくれることで、学生を喜ばせようとリハビリに取り組み、運動のモチベーションの創出につながることを発見した。
東日本大震災の際に、仮設住宅暮らしで運動不足解消のために「歩く人プロジェクト」を、またコロナ禍では高円寺の街中を歩く「夕焼け散歩」を実施。運動を通して地域住民と医師会、学生がつながり、自分の健康だけでなくお互いや地域を思いやる気持ちが芽生えることで、地域活性が促されることもわかってきた。
ヨーロッパでは、財力、権力、社会的地位の保持には責任が伴うことを指す「ノブレス?オブリージュ」というフランス語が息づく。これはラグビーなどのスポーツでも使われる言葉で、身体的機能に恵まれたアスリートは立場の弱い人に優しくすることが大事だと考えられている。
佐藤先生の教育方針も「ノブレス?オブリージュ」がテーマ。心身の健全な学生が立場の弱い人に手を差し伸べることは、SDGsで先進国に求められる立ち振る舞いにも類似している。運動を通して健全性をつくることは、SDGsにつながる意識の情勢になると言っても過言ではない。