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活動レポート
活動レポート

TEIKYO SDGs reportボランティアの色彩

- 社会の橋渡し役として -

3 すべての人に健康と福祉を4 質の高い教育をみんなに10 人や国の不平等をなくそう17 パートナーシップで目標を達成しよう

3 すべての人に健康と福祉を4 質の高い教育をみんなに10 人や国の不平等をなくそう17 パートナーシップで目標を達成しよう

李 永淑 准教授の写真

帝京大学文学部社会学科 准教授 李永淑

2007年大阪大学大学院 人間科学研究科 博士後期課程単位取得満期退学。博士(人間科学)。大学ボランティアセンターボランティア?コーディネーター、アメリカNPO法人(フードバンク)特任研究員等を経て、2019年より、帝京大学文学部 社会学科 准教授に就任。関係性がもたらすインパクトについて、ボランティアやソーシャルビジネス、地域連携やキャリア形成、アクティブラーニングの領域から研究している。

このレポートを要約すると...

  • 李先生はボランティアやソーシャルビジネスにおけるCollective Impactについて研究している
  • Collective Impactとは、集団やシステムレベルの変化を起こすために構造的な社会的不平等の解消をめざし、そのためにともに学び協働するコミュニティの人々と様々な組織によるネットワーク
  • 支援が必要とされる現場では、社会的な立場や構造によって非対称的な関係性が構築されやすい
  • そうした関係性が固定されると、構造的な不平等が解消されず、本質的な変化を起こすことが難しい
  • 利害関係のないボランティアは、関係の非対称性を越えた大義や善意をベースにした活動ができるため、社会に柔軟性や多様性をもたらす存在となりうる
  • たとえば、助ける医師と助けられる患者といった非対称的な関係の中だけだと病院社会が硬直的になりやすいが、ボランティアはこのような状態を柔軟に変える取り組みや、多様なステークホルダーが協働するネットワーキングが可能である
  • このような形の実践とその意義は、SDGsでも同様のことが言われている
  • SDGsのあらゆるゴール、指標の中で、多くのボランティアが活躍し、多様なソーシャルビジネスが創出される構造は、高い価値と可能性が秘められている

小児がん病棟でのベッドサイドティーチング

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私は大学を卒業してから就職したものの、家庭の事情ですぐに退職せざるを得ませんでした。そしてその後、地元の国立大学病院に事務補佐員として就職し、小児科の秘書として勤務することになりました。数十年前の病院は、まだまだ設備投資や取り組みの発展途上でもありました。研究棟と病棟を往復しながら、様々な雑務をこなす日々を送っていたとき、上司から小児病棟で、入院している子どものベッドサイドティーチングをやってみないかと言われました。小児病棟には、多くの小児がん患者が入院していました。入院期間が長期にわたるため、当時、全国に先駆けて院内学級が設置されていましたが、義務教育以外に関しては対象外でした。高校進学や大学進学はどうなってくるのかという課題に病院は寄り添えなかったのです。また、未就学児に対する環境も未整備でした。プレイルームはありましたが、遊びの場を作る人はいませんでした。病院なので当然、治療を優先すべきという考えが基本です。しかし、退院した後は、もとの生活とコミュニティに戻ります。退院できたけれども、復学した学校で辛い思いをしたという話を聞くと、なんとも言えない複雑な気持ちになりました。過酷な治療の副作用で、外見は大きく変わり、体力も落ちます。治癒したとみなされる状態(寛解)までの道のりは長く、再発の可能性と常に隣り合わせです。そして、長期にわたる閉鎖病棟での入院生活は、多様な人とかかわり合う経験が失われる期間でした。さらには、陰で我慢してきたきょうだいや家族の苦悩など、病気を治すだけでは収まらない、様々な問題が複合的に絡み合っていました。

私は、病棟で子どもたちや家族、医療関係者とかかわる中で、患者でも医療関係者でもない立場の人間が、ボランティア的に患者さんと接触する機会は、極めて貴重であり重要なのではないかと考えるようになりました。また、病院を一つの社会と捉えると、多様な立場の人々がかかわり合うことで生まれるダイナミズムが見えてくることに気づきました。中でも、ボランティアという立場はどこにも属しておらず、病院社会というシステムの中にあって自由度も高い。だからこそできることがある。私は、こうした状況に可能性を感じ、環境を変えていくことの重要性に着目しました。そこで、病院に勤めながら大学院への進学を決意し、現在につながる研究の扉を開いたのです。

ボランティアだからできること

大学病院の小児がん病棟で行っていたボランティア活動の中の一つに、子どもたちの誕生日を祝うための仮装訪問がありました。形から入ろうと考え、着ぐるみを着ました。ある日、移植のために長期間個室管理になっている子どものお母さんから「お誕生日なのに母子2人きりなんてさみしすぎる。何か楽しいことを企画してもらえないでしょうか。」と相談を受けたことがきっかけでした。「お誕生日=お祝い」という単純な発想で、とりあえずボランティア有志で祝いに行こう!という話になりました。しかし、ただおめでとうと言うだけだと芸がないよね、となってキティちゃんの被り物とか、チャイナドレスとか思い思いの仮装をして病室を訪れてお祝いの歌を歌って手作りカードを渡しました。たったそれだけなのですが、本当に喜んでもらえて逆に驚きました。そしてそれが狭い「病棟社会」で瞬く間にうわさが広がり、子どもたちとお母さんたちから依頼がどんどん来るようになったのです。そうすると、どんどん変化が起きる。たとえば、ベッドの上で待っている子どもがプリンセスの衣装を身につけるようになりました。当初は警戒気味だった医師や看護師も、いつの間にか思い思いの仮装をして一緒に楽しんでくれるようになりました。彼らは普段楽しいことが好きでも、専門職という病院内の立場が「病院で仮装する」ことを許しません。しかし、私たちの誕生会は、あくまでボランティア活動でしたから、専門職の倫理性に囚われすぎる必要がなく、患者さんを楽しませることのみにフォーカスできる大義名分になったのです。

このような活動が可能になったのは、仲間になってくれた大学生ボランティアのおかげです。ボランティアチームは最大で60人ほどになり様々な役割が生まれました。毎回手作りでゲームの道具を作る人がいたり、準備に没頭する人が参画してくれました。直接的なボランティア活動だけではなく、間接的なボランティア活動も重要であることをチーム内に共有することで、様々な役割で輝ける人たちが生まれました。そのほかにも、月に一度たこ焼きパーティーを開いたり、正月には書き初め大会も開催しました。医師が”ちょっと僕達筆なんだよね”といって参加してくれる。患者さんの意識もどんどん明るくなる。現在、Collective Inpactという概念に注目して研究と実践を重ねていますが、概念を知る前からこうした活動をしてきたからこそ、強い共感を覚えています。

非対称な関係性を埋めていく

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支援現場では、支援側と被支援側という非対称的な関係性が構築されやすいです。特に医療や福祉の現場では、助ける、助けてもらうという関係性が固定化されやすい。これをどのようにフラットにし、弾力性を持たせるかというのが私の研究テーマです。現在では、こうした構造の中にボランティアやソーシャルビジネスといった存在が入り込んでいくと、構造に柔軟性が生じることがわかってきています。既存の価値観ややり方に対して、新しい発想や取り組みなどを仕掛けることで、コミュニティを覆っていた”こうでなければならない”といった思い込みが消えていくのです。ここに、構造問題を解決するためのボランティアやソーシャルビジネスの存在価値があるのではと注目しています。

現在、私のゼミでさまざまなトライを行っています。たとえばゼミ生はフォーラムシアター(討論演劇)に取り組んでいます。社会の様々な前提を理解しておくことは必要ですが、現実の社会では物語は予想不可能な状態で継続していきます。そして、社会には無数のステークホルダーがいますから、自分の目線だけでいればいいわけではありません。そこで、「他者を演じる」という演劇のフォーマットを使って「他者を理解することを理解する」試みを始めました。まず、学生たちに自ら体験した「モヤモヤしたエピソード」を寸劇として再現してもらいます。それを観た他の学生たちが、「自分だったらこうする」とか、「こんな展開だったらどうなるだろう」と想像して浮かんだ行為を、「演じ手」として元の劇に持ち込んで、演じる学生をどんどん入れ替えていきます。すると、演じている時と鑑賞している時とで、そのキャラクターと自分の相違点を見つけ出しながら、こんな行動もできたのではないか、こういう会話があったのではないかということを考えるきっかけが生まれます。つまり、他者を感じるトレーニングになる。実は、ボランティアこそが常にそういう立場なのです。自分と異なる他者という違和感と向き合い、理解しようとしたり共感しようとしたりしてみる。そして、自分が知らなかったり無関係だと思っていた現場を、理解しようとしたり共感しようとしたりしてみる。フォーラムシアターを通して、その視点を学ぶことができると考えています。実際の現場では、さらに自分が求められていることを考え、実践し、その実践に対する他者の反応を確認します。担当する授業では、実習授業(ソーシャルビジネス実習)において、このプロセスを繰り返す形のアクティブラーニングを導入しています。

社会の橋渡し役

SDGsにはさまざまなカラーがありますが、私もボランティア論の授業で毎回、ボランティアに対するイメージカラーを学生に聞きます。大体初回の授業では、みんなオレンジとかピンクという傾向があります。それが授業の度に色が変わり、最後には様々な色が混ざった結果として黒だという学生や、何色にも染まる白だという学生が多く見られます。中には、ホログラムみたいな極彩色だという学生もいます。ボランティア=温かさや優しさ、人助けというイメージだけだった学生たちが、授業を通して「私」「他者」「社会」の眼差しからボランティアを複眼的に捉え、さらにそれらが交差する点から考察することで、さまざまな「ボランティアの色」を発見しています。そして、ボランティアの持つ可能性とともに、ボランティアが要請されてボランティア活動が成立する構造、ボランティアにかかわる人々の関係性を学んでいます。200近くの国家の中には無数の歴史的背景をもった民族や部族がいて、地域ごとに異なる環境を抱えながら共存しています。さらに、これだけネットワーク化された社会ですから、それらは必ず連携しています。そうした中で非対称的な関係性が強化されれば、貧富の差の拡大、紛争といった、深刻な社会課題が増大していくのは自明の理です。SDGsの達成には、あらゆる分野、人、文化をつなぐ、より多くの存在が求められます。学生のみなさんには、現場にいろんなヒントや気づきがあることをフィジカル=五感で理解することが重要であることや、もっとどんどん行動して失敗しながら学ぶということを理解してもらいたい。そうして、多様な人々の幸せを実現するための社会の橋渡し役として行動できる力を身につけ、世界に羽ばたいてほしいと願っています。