帝京大学外国語学部外国語学科
准教授
西向堅香子 先生
明治大学卒業後イギリスに留学。ロンドン大学東洋アフリカ学院社会学?人類学研究科修士課程を修了し、ロンドン大学教育研究所社会政策研究科で博士号を取得。2016年からは帝京大学外国語学部に講師として就任。アフリカのシエラレオネとガーナの基礎教育の研究に注力している。
国際社会による途上国への教育支援は第二次世界大戦後から行われている。2015年にMDGs(ミレニアム開発目標)が採択されたことを機に教育分野も追い風を受け、途上国でも初等教育の量的普及がなされた。
ガーナでは小学校から高校まで教育の無償化を導入しているが、中等教育以降の進学率が低いなど問題が顕在化。特に農村部では、雨季には安全に通学できなかったり、事故や事件に巻き込まれるケースもある。トイレなどの衛生面が整っていない環境は、生理の問題もあって女子生徒の足が遠のいてしまう要因にもつながる。
ガーナの公立学校の運営資金は生徒の数に応じて助成金が割り当てられ、1年に1度まとめて振り込まれる。その金額は1人あたり約200円。学校によっては補習を実施するが別途親が費用を負担する必要があるため、家庭の経済状態や教育への意識が子どもの学習成果に影響を及ぼすことがわかっている。
ガーナの農村地域の成績上位校と下位校で教員と生徒の意識調査をすると、上位校では教員の授業への高い意欲が指導の工夫につながっていることがわかった。また、コンテストなどを行って子どもの学習意欲を高める取り組みを実施している学校もある。地域による教員への報酬体系に差はないため、教育の質が、教員の意識やスキルに委ねられているという現状も。
ガーナの現状を目の当たりにすると、教育の無償化はスタートにすぎず、改善には工夫や努力が必要。それでも、教員は子どもにとって憧れの職業で、情熱を持つ教員がいる学校ほど成績が良いことがわかっている。教育は、人が人に向き合うもの。課題解決に尽力し、質の良い教育を連鎖させていくことで、社会の価値も高まっていくだろう。